過労死シンポジウムに参加(1)

 11月8日(土)午後1時半より、名古屋市中小企業振興会館メインホールにて、「過労死等防止対策推進シンポジウム(愛知会場)」が開かれました。厚生労働省が、毎年11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、今年も全国でシンポジウムを開催しているのですが、その一環として主催した催しです。約180名が参加しましたが、そのうち、当ユニオンから若干名、ともに東海ネットに参加している他の団体からも数名、参加しました。内容はとても意義がありました。以下、概要をお知らせします(長くなりますので、二つの記事に分けます)。
 
 会場に、過労死遺児の「マー君」の詩を題材に作られた歌が流れた後、開会となりました。まず愛知労働局の岡田直樹労働基準部長が、主催者挨拶として、このシンポジウムを開催する趣旨を話しました。続いて、協力団体挨拶として、名古屋過労死を考える家族の世話人代表の伊佐間佳子さんが、娘さんをハラスメントで亡くされた体験を基に、ハラスメントを止めようと訴えました。
 
 続いて、愛知労働局の山脇薫雇用・環境均等部指導課長が、愛知労働局からの報告として、「パワハラ防止対策について~労働施策総合推進法~」と題して話しました(ちなみに、6月23日に、愛知働くもののいのちと健康を守るセンターが、山脇課長をお招きしてパワハラ学習会を行い、当ユニオンも5名規模で参加したのですが、その時よりは短い20分、簡潔に話していただきました)。報告ではまず、愛知労働局における労働相談の状況として、昨年度は、総合労働相談は増加したが、民事上の個別労働相談は減少した、これはコロナが影響しているのではないか、としました。後者については、解雇関係が少なめだったのは、リーマンショックの時よりは雇用維持がされているということではないか、としつつ、だからといって相談内容は深刻でないわけではなく、ワンストップでできる前者は増加している、としました。そして、労働施策総合推進法関係の相談についても、パワハラ防止措置がされていないという相談が多いことが紹介されました。次いで、ハラスメント対策の強化を謳った、労働施策総合推進法などの法改正の内容について紹介しました。パワハラだけでなく、セクハラ・マタハラについても対策の強化が盛り込まれていることも触れられました。そして、事業主が講ずべき措置についての詳しい説明がされました。すなわち、パワハラの定義をしたうえで、具体例を示し、そのうえで、こうしたパワハラに関して講ずべき措置を具体的に示しました。また、セクハラ対策についても具体的に示しました。そして最後に、厚労省。労働局の取り組みの紹介をして、報告を終えました。
 
 続いて、15年に過労自殺した電通社員の高橋まつりさんの母親である高橋幸美さんが、過労死遺族の声として、「高橋まつりはなぜ亡くなったのかー若者の過労死を防ぐためにー」と題して話しました。高橋さんは静岡の方だそうですが、毎年シンポにはまつりさんの服を着て参加しているとのことで、まずまつりさんがクリスマスの日に亡くなった時の話から始めました。今もつらかったろう、あの会社に入っていなければ、と悔やんでいると言ったうえで、亡くなった日は朝電話があり、つらいとの言葉に対して、会社を辞めるよう言って、うんうんと言い、年末一緒に過ごすとの話もあったので大丈夫と思った、が、警察から自殺の原因を聞かれて、自殺するような娘ではない、強い精神力を持っていた、という娘がなぜ、という疑問から、まつりさんのそれまでの姿を振り返りました。
 
 自立心が強く、お母さんを楽にしたいと電通(と名指しはしませんでしたが)に入社した、しかし電通は以前に過労自殺事件を起こしていて、自分は異常な会社だと言ったが、娘は自分はハングリー精神があるし、年収が高いところはどこも激務だからと言った。しかし、試用期間の時点で徹夜続きの仕事で、皆がそうしている、10月に正社員になったら、一週間に10時間しか寝ていないなどの生活で、退職も考えつつも、親は口出ししないでと言っていた。しかし、当時、睡眠3時間生活、退社してすぐまた出社、誰もが徹夜していて新入社員は帰れない、そして11月には、死と言う言葉が出てきていた(先輩へのメールやSNS)。そして12月には2時間睡眠、何のために生きているのか、という言葉になっていた、実際、勤務間インターバルなど関係なしの53時間連続勤務とか、10月の残業時間が106時間とか、SNSで死に関する言葉が増えてきたのはうつ病を発症していたと思われるのだが、病院に行く暇もない状態で、しかし会社は残業を過少申告させていて、11月に勇気を出して人事に相談したりしているのだが、12月は繁忙期で残業100時間だ、と言われたり、新入社員は忘年会準備もあり、労組の先輩に相談してもうまくいかず、会社は是正勧告を受けていても残業を減らすどころか、社内で食事と残業隠しをしたり、徹夜しているのを知っていて「髪がボサボサだ」と言ったり、異常な「社員心得」があったり、とかで、誰も助けない、組合も動かない、というようになっていた、とのことです。
 
 そして話は現在に連なり、今、厚労省過労死等防止対策推進協議会委員を務められている立場からでもある話に移っていきました。当初、出勤簿の提出を求めたら、会社は「違法な残業はしていない」と言っていたそうですが、のちに資料提出、労災申請に協力となり、労災は認められ、労基法違反で会社は有罪ともなった、ホームページで「改革に取り組む」と言い、変わってきているところはあるが、生きているうちに、と残念でならない。当時、連日報道され、22時に会社の電気が消され、「働き方改革」の動きにもつながった。しかし今も、過労死の原因である長時間労働・ハラスメントは常態化して多くの人が亡くなっている。大手企業や、同じ企業から続出したりしている。過労死白書で、過労自殺した人の半数の人が精神疾患発症後6日以内に亡くなっている、とされている。過労死ゼロの対策が必要で、労働局、労組は命を守ってほしい、働いているのは生身の人間。構造を根本から直してほしい。過労死は特別な問題ではない。悩んでいる人がいないか気にかけてほしい。悩んでいる人はSOSを出してほしい。命より大切な仕事はない、一刻も早く働き方を変え、幸せな国にしてほしい、と締めくくりました。
 
 長くなりましたが、25分間、静まり返った中での、重い言葉でしたので、書き留めておきます(次に続きます)。

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