愛らぶ畳事件、合意のない労働条件不利益変更、退職は自己都合?
当労組は、株式会社愛らぶ畳(岐阜県揖斐郡/畳工事・内装工事・畳雑貨製造販売など/代表取締役 野口育夫)で以前働いていた組合員Aさんの雇用や未払い賃金に関する問題について、これまでに2回の団体交渉で愛らぶ畳に対し解決を求めてきました。
この投稿では、愛らぶ畳とAさんとの間で起きた労働問題について、その概要をまとめています。
Aさんが愛らぶ畳に入社したのは2020年2月のことでした。犬好きだという野口社長から「このドッグカフェは赤字覚悟でやるつもりだから。」と聞いたこと、Aさん自身も犬が好きでドッグカフェに関心があったことから、安定して働けることを期待して、Aさんはそれまで働いていた仕事を辞めてドッグカフェ「D&C PAD」で働くことを決意しました。
入社当時の労働条件は週休2日・フルタイムの時給制、入社2ヶ月後からは完全月給制となりました。入社にあたり雇用契約書や労働条件明示書など労働条件が明記された書類はありませんでしたが、2020年9月末頃に会社は“2020年4月1日から”として雇用契約書をさかのぼって作成しました。その雇用契約書では、Aさんが入社した際には無期雇用契約であったにもかかわらず、「2020年4月1日から2021年4月20日」を雇用期間とする自動更新の有期雇用契約とされていました。
Aさんの仕事は店舗での調理や接客・販売業務、販売する物品の製作などで、店舗には店長である社長も来て従業員に指示を出していました。しかし、社長の指示には一貫性がなく、社長が決めたルールであっても、そのルールを社長自身が守っていないことが多々あるなど、従業員は対応に困っていました。
また、愛犬とともに過ごせることが大切な要素であるドッグカフェであるのに、社長は来店客や来店客の愛犬について「あの犬には二度と来てほしくない。」とか「最近の飼い主はしつけがなっていない。」などの陰口のほか、来店客によってサービスや態度を変えることも多く、Aさんは社長のそういった態度に強いストレスを感じていました。
さらに、社長は従業員に対しても好き嫌いが激しく、社長が嫌いになった従業員に対しては、労働条件を不利益に変更する対応をしていたことを、Aさんは見聞きしていました。
複数の従業員に対する不利益扱いを目の当たりにしながら、Aさんは「いつか自分も同じ目にあうかもしれない。」と不安を抱えながら仕事を続けました。
そうしたところ、2021年8月にAさんは社長から「来月から時給制で土日のみ。」と、これまでの労働条件を変更する旨を通告されました。そして、困惑したAさんに対し社長はさらに「平日はどこか探せば?こっちは構わんよ?」と、労働日が減ったことに対して会社として保障する気はないといった発言をしました。
もちろんAさんは労働条件の一方的な切り下げには納得していなかったため了解する返事はしませんでしたが、社長のこれまでの対応が影響して体調不良であったAさんは、一方的に切り下げられた労働条件で働き続け生活を維持していくことができないため、退職せざるを得なくなりました。
さらに、給与支給日の給与を見ると、明らかに働いた日数に対応していない低い金額しか支払われていませんでした。このことについてAさんは何度も社長にメールで問い合わせましたが、社長からは全く返答がありませんでした。
会社側は、Aさんの退職はあくまで本人の申し出で、退職強要も解雇の意思表示もしていないと主張しています。しかし、労働条件を一方的に不利益変更し生活が成り立たない状況に追いやったのは会社であるのに、Aさんの退職は単なる自己都合なのでしょうか?当労組は、Aさんの退職は、会社による退職強要であって、実質的には解雇に相当するものであると考えます。
先述のとおり、社長はAさん以外の従業員にも同様の労働条件切下げを行い、自ら職場を去っていくよう仕向けてきており、こうした状況からも、不要になった労働者に対し退職を強要する意思がこの会社にあったことがうかがえます。
これまでの団体交渉では主張が平行線で、現時点では解決の見通しが立っていません。
読者のみなさん、愛らぶ畳の問題について情報をお持ちの方はぜひ当労組へご連絡ください。今後は団体交渉以外の手段も視野に入れて解決を目指したいと思います。