ユニオン学習会を開催
7月9日(土)午前1時より、ユニオン事務所(+Zoom)にて、ユニオン学習会を開催しました。今回は東海労働弁護団事務局長でもある白川秀之弁護士(名古屋北法律事務所)を講師にお招きし、「解雇の金銭解決制度について」をテーマにお話ししていただきました。解雇に直面して取り組みを経験している日本人・ブラジル人組合員も含む10数名の参加で、質問も相次ぎ、活発な学習会となりました。
解雇の金銭解決制度とは、「解雇が無効となった場合、一定の金銭を使用者が労働者に支払うことで雇用関係を終了させる制度」のことですが、このかん労働者側の反対で導入されてきませんでした。しかし今年の4月22日、厚労省内に設置された「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(研究者で構成)が「報告書」を公表し、今後、導入のための法改正が進められることが予測される状況になってきています。このままでよいのか、という危惧を感じ、この学習会を企画しました。
白川さんは最初に、この講演を、解雇された労働者はどうするか、という姿勢でこの制度について考えるというように態度を示したうえで、わかりやすく話されました。すなわち、そもそも解雇とは何か、解雇の規制は、戦後になって、裁判上のルール(「解雇権濫用法理」)ができ、これが労働契約法に盛り込まれていること、解雇に対して労働審判や裁判ではどう争い、どう解決するか、という、解雇された労働者が基本的におさえるべき点をまず確認しました。そのうえで、労働審判や裁判で解雇事件を争う場合の多くが「金銭和解」による解決となっているなかで、金銭解決制度の導入が検討されている、という現状を示しました。
次に、この「金銭解決制度」の賛否を示す意見を紹介したうえで、一番の反対理由は、この制度を使うことを申し立てることができるのは労働者とされているが、いずれ使用者が申し立てることができるとされる危険性があることであり、今後、政府が昨年の「成長戦略フォローアップ」で打ち出したように、労働政策審議会で制度導入を決め、立法化を加速させる危険があるとしました。
そして最後に、安倍内閣で大臣を務めもした竹中平蔵氏は「日本は正規労働が異常に保護されており、だから非正規労働者が増加している」と言うが、国際比較をすれば、日本は雇用保護が緩く、しかし雇用保護が厳しい国の方が非正規労働者が少ないという逆のデータが示されている、としたうえで、今後の運動は、金銭解決はすでに可能なのに、解雇の無効判決を出すまでの苦労をすることを前提とし、他方使用者には不当解雇をためらわなくする制度を新たに導入することになることをアピールしていく必要があるとし、最後に参院選を前に日本労働弁護団が行った政党アンケートの結果を紹介して、講演を終えました。
その後質疑応答に移りましたが、解雇に対する取り組みを進めてきた参加者を中心に次々と質問をして、活発な意見交流ができました。特に、現在は金銭解決という場合、使用者側も、解雇の有効性を裁判で争った場合の損害も予測して解雇するかを事前に考慮しているのに、逆に、これだけ払えば裁判で解雇無効とされても金で解決できると不当解雇を促進しかねないという、より労働者が苦しめさせられることにつながる危険性を、改めて感じさせられました。二時間弱でしたが、充実した学習会となりました。白川弁護士、参加した皆さん、ありがとうございました。
次回は8月27日(土)午後6時から、ユニオン事務所にて、「パワハラについて」をテーマに行います。今回のように、経験者・当事者である組合員の方が多く参加してくれるとより実のある学習会になると思います。多くの皆さんの参加を、よろしくお願いします。